腹痛をともなう他臓器疾患
消化管と同様、消化器系臓器としては肝臓、胆嚢、膵臓があります。
肝臓疾患による腹痛
肝臓は栄養を蓄えたり、様々な代謝に関与したり、胆汁を産生したりと多岐にわたる機能をもっている臓器です。しかし同時に「沈黙の臓器」とも言われ、異常があった際に症状での発見はしにくい部位と言われています。
腹痛を起こしうる肝臓の疾患としては、肝臓がんや、肝臓内に出血をきたして肝臓を圧迫した場合などです。
胆嚢疾患による腹痛
胆嚢では、胆石発作や胆のう炎が、また胆石がらみですと胆汁の流れる管(胆管)にも結石が発生(胆管結石)して痛みが起きることもあります。
胆石の存在は、痛いだけではなく、それにより胆汁の流れがせき止められてしまうと胆石の流出障害が起き、そこに胆汁が感染する可能性(胆のう炎・胆管炎)もあります。
膵臓疾患による腹痛
膵臓も腹痛の際に調べるべき臓器です。膵臓には急性膵炎、慢性膵炎・膵石、膵臓がんが主に腹痛を起こす疾患として知られています。
急性膵炎
急性膵炎は多量のアルコールや高脂肪食(一部原因不明のもの=特発性もあります)の後や、胆石を背景として炎症が起きると、その膵消化酵素により自身の組織が自己消化を受け、内部に膿を貯留していくことがあり、これが膿んでしまうこともあります。強い腹痛と高熱を発症し、鎮痛に麻薬を要することもあります。
慢性膵炎・膵石
慢性膵炎では慢性的な飲酒量の蓄積などにより膵臓が慢性炎症を起こし、萎縮(機能を落とす)したり、内部に膵石と呼ばれる石灰化構造物を形成したりします。この膵石により、膵液の流出が妨げられると膵管の中の圧力が上昇し、腹痛を引き起こします。一般的な鎮痛薬の他、膵液の流出障害が高度と判断されれば内視鏡で膵管ステントというチューブを膵管に挿入し、膵液の流出を担保するといった方法があります。
膵臓がん
膵臓がんは膵臓にできる癌で、5年生存率が女性8.1%、男性8.9%と、全がんの中でも低い癌、すなわち難治がんとして知られています。その理由は初期に自覚症状が出にくく、症状が現れてから病院を受診する場合には、既に進行しているケースが多いからです。
治療法はステージにより、抗がん剤、手術、放射線療法などが組み合わさって行われます。発見するための検査としてはCT、腹部エコー、MRI検査などが代表的ですが、最近では超音波内視鏡と言って、胃カメラの先端に超音波装置の付いた内視鏡を用いて、消化管の中(膵臓の最も近いところ)から観察する方法が広まってきています。
膵臓の周囲には神経が多く分布しており、進行した場合には、神経に浸潤し、強い痛み、具体的には心窩部痛、背部痛を引き起こします。疼痛は通常の痛み止め、麻薬など段階的に引き上げていくほか、神経に直接麻酔を注射(神経ブロック)するなどして対処します。