糖尿病の合併症
糖尿病の合併症には、極度のインスリン作用不足によって起こる急性合併症と、長年の高血糖によって起こる慢性合併症があり、それらの発症予防と進展を阻止することが糖尿病治療の目的です。
急性合併症
主な急性合併症には以下のようなものがあります。いずれもさまざまな程度の意識障害をきたし、重度の場合は昏睡に陥ることもあり、迅速な治療が必要です。
1. 高浸透圧高血糖症候群
- 高齢の2型糖尿病患者に起こることが多く、発症まで数日の期間があります。感染症、脳血管障害、手術、高カロリーの点滴、利尿剤やステロイドの投与により高血糖をおこした場合に発症しやすくなります。
- 著しい高血糖(血糖値600mg/dL以上)と高度な脱水による高浸透圧により循環不全を起こした状態です。
- 糖尿病性ケトアシドーシスとは異なり、著しいアシドーシスは認めません。
2. 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)
- インスリンが不足した状態では、体が糖をエネルギーとして使えず、代わりに脂肪を分解し始めるため、血中にケトン体が蓄積します。ケトン体が著しく高くなると血液が酸性に傾き、ケトアシドーシスと呼ばれる状態になります。
- ケトアシドーシスは1型糖尿病で主にみられ、糖尿病発症時やインスリン注射を中断したとき、感染症や外傷などによってインスリン必要量が急に増加した時に起こります。
- 初期症状として、激しい口喝、多飲、多尿、消化器症状(吐き気や腹痛)、全身倦怠感があり、進行すると呼吸の異常や血圧低下、意識障害を起こします。
- 放置すれば生死に関わることもあるため、速やかな入院治療が必要です。
慢性合併症
慢性合併症は、糖尿病が長期間適切にコントロールされない場合に発生する可能性があります。これらは徐々に進行し、身体の多くの部分に影響を与えます。
1. 糖尿病性網膜症
網膜の血管が損傷し、視力障害や失明を引き起こす可能性があります。
2. 糖尿病性腎症
腎臓の機能が低下し、最終的には腎不全に至ることがあります。
3. 糖尿病性神経障害
手足の感覚障害、痛み、不快感などを引き起こし、傷や感染に対する感覚が鈍くなることがあります。また、消化管運動神経の機能低下により、吐き気、便秘、下痢などが起きることがあります。
4. 動脈硬化性疾患
心筋梗塞や脳卒中、足の欠陥の狭窄(末梢動脈疾患)等のリスクが高まります。
5. 糖尿病性足病変
神経障害、末梢動脈疾患、けが、感染症などが複雑に関連し、潰瘍や壊疽を起こす重症な足病変を発症することがあります。
これらの慢性合併症を予防または管理するためには、血糖値の適切なコントロール、定期的な検診、健康的なライフスタイルの維持が必要不可欠です。特に慢性合併症は糖尿病が発症してから数年後に現れることが多く、初期段階では無症状であることが多いため早期発見が重要です。
また、高齢になると体の回復力が低下し、合併症が引き起こす影響がより重篤になる可能性があるため、特に注意が必要です。