メニュー

糖尿病の治療

糖尿病治療の目標

糖尿病治療の目標は、血糖値およびその他(血圧、脂質代謝)の良好なコントロール、適正体重の維持、および禁煙の順守を行うことにより、合併症の発症・進展を阻止し、ひいては糖尿病がない人と変わらない寿命と日常生活の質の向上の実現を目指すことです。

血糖値を適正にコントロールするための指標として、HbA1c(ヘモグロビンA1c)という検査値があります。血糖値は1日のなかで食事や運動、ストレスなどの影響を受けて常に変動していますが、採血時から過去1〜2カ月間の平均血糖値を反映するHbA1cが血糖コントロール指標として役立ちます。

日本糖尿病学会では、

  • 血糖正常化を目指す際の目標値は「HbA1c 6.0%未満」
  • 合併症予防のための目標値は「HbA1c 7.0%未満」
  • 低血糖などその他の理由で治療の強化が難しい際の目標は「HbA1c 8.0%未満」

としています。

65歳以上の高齢者の場合は、認知機能や基本的ADL、手段的ADLと呼ばれる日常生活における活動度、併存疾患などによって個人差があるため、状態により個別に目標値が設定されています。これらを参考に目標値は個々に判断し、決める必要があります。

糖尿病の治療法

糖尿病の治療には、食事療法、運動療法、薬物療法があります。これらは、血糖コントロールを改善し、合併症の発症リスクを低減するために重要です。

食事療法

食事療法のコツ
  • 腹八分目
  • 食品の種類はできるだけ多く
  • 動物性脂質(飽和脂肪酸)は控えめに
  • 食物繊維を多く含む、野菜、海藻、きのこなどをとる
  • 朝食、昼食、夕食を規則正しく
  • ゆっくりよくかんで食べる
  • 糖質を多く含む食品の間食を避ける
食事療法を進める際のポイント
➀エネルギー摂取量

年齢、肥満度、身体活動量、病態などを考え、エネルギー摂取量を決定します。

<エネルギー摂取量の算出方法>
エネルギー摂取量=目標体重×エネルギー係数

注1)目標体重の目安は年代ごとによって異なり、一定の幅があります。
基本的な目標体重の算定式は以下の通りです。
65歳未満:身長(m)×身長(m)×22
前期高齢者(65歳~74歳):身長(m)×身長(m)×22~25
後期高齢者(75歳~):身長(m)×身長(m)×22~25
ただし75歳以上の後期高齢者に関しては、現体重に基づき、筋力低下や
ADL低下、食事摂取状況などを踏まえて適宜判断することとなっています。

注2)エネルギー係数

軽い労作(大部分が座位の静的活動) 25~30 (kcal/kg目標体重)
普通の労作(通勤・家事、軽い運動を含む) 30~35 (kcal/kg目標体重)
重い労作(力仕事、活発な運動習慣) 35~  (kcal/kg目標体重)
②栄養素のバランス

エネルギーのもととなる三大栄養素は、炭水化物、タンパク質、脂質です。
一般的な初期設定のバランスは、以下の通りです。

  • 炭水化物…指示エネルギー量の40~60 %、食物繊維が豊富な食物をえらぶ
  • タンパク質…指示エネルギー量の20 %まで
  • 脂質…炭水化物、脂質の残り

これらを参考に、できるだけ継続可能であること、体重、血糖コントロール、血圧、脂質に対する影響なども考えて、個々人に適したものにすることが重要です。

運動療法

運動療法の効果
  • 急性効果:ブドウ糖、脂肪酸の利用が促進され、血糖値が下がる
  • 慢性効果:インスリン抵抗性が改善する
  • エネルギー摂取量と消費量のバランスが改善されることで、適正体重に近づけることが期待できる。
  • 加齢や運動不足による筋力の低下や骨粗鬆症の予防
  • 高血圧や脂質異常症の改善
  • 心肺機能の向上
  • 運動能力の向上
  • 爽快感や気分転換など日常生活の質の向上を高める効果も期待できる
運動療法を進める際のポイント
➀運動開始前のメディカルチェック

運動に伴うアクシデントとして最も重要なのは心血管イベントの発生ですが、それ以外にも運動療法を禁止あるいは制限した方がよい場合があります。運動療法開始前に、網膜症、腎症、神経障害などの合併症や整形外科的疾患などを含む身体状態を把握する必要があります。特に、以下のような場合は運動療法を禁止あるいは制限した方がよいので、注意しましょう。

  • 血糖コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値 250 mg/dl以上、尿ケトン体中等度以上陽性)
  • 増殖前網膜症がある場合
  • 腎不全の状態にある場合
  • 心筋梗塞、狭心症や心機能に障害がある場合
  • 骨・関節疾患がある場合
  • 感染症にかかっている場合
  • 糖尿病性壊疽
  • 自律神経が高度に障害されている場合
②運動の種類

有酸素運動とレジスタンス運動に分類されます。ともに血糖コントロール改善に有効であり、併用によりさらに効果があります。高齢者糖尿病では、バランス運動も重要です。

それぞれの運動についての具体的な例は以下の通りです。

  • 有酸素運動:歩行、ジョギング、水泳、水中歩行など
  • レジスタンス運動:腹筋、腕立て伏せ、スクワットなど
  • バランス運動:片足立位保持、ステップ練習、体感バランス運動など
③運動の強度

一般的に中強度の有酸素運動がすすめられます。
「中強度」とは、簡易的に1分間の心拍数が、50歳未満では100~200拍、50歳以上では100拍未満が目安です。患者様ご自身の「楽である」または「ややきつい」といった体感もひとつの目安になります。「きつい」と感じるときは強すぎる運動であり、血圧が上がりすぎたりするので要注意です。

④運動時間と頻度

運動持続時間は、糖質と脂肪酸の効率がよい燃焼のためには20分以上の持続が望ましいといわれています。
日常生活に運動を取り入れることも大切です。

  • 有酸素運動:中強度で週に150分かそれ以上、週に3回以上、運動しない日が2日以上続かないように
  • 歩行運動:1回15~30分間、1日2回、1日に約1万歩程度
  • レジスタンス運動:連続しない日程で、週に2~3回

薬物療法

糖尿病治療薬は、以下のように分類されます。

  • 作用機序:インスリン分泌非促進系、インスリン分泌促進系、インスリン製剤
  • 投与方法:経口薬療法、注射薬療法

患者様の病態、合併症の有無、薬剤の作用特性などを考えて薬剤を選択します。できるだけ低血糖を起こさないようにするのも、選択する際の重要なポイントです。

経口薬療法

注射薬療法

糖尿病の注射療法には、GLP-1受容体作動薬とインスリン療法があります。

  • GLP-1受容体作動薬
    1日1~2回注射する薬剤(3種類)と、週に1回注射する薬剤(2種類)があります。
  • インスリン療法
    インスリン療法には、絶対的適応と相対的適応があります。
①絶対的適応
  • インスリン依存状態
  • 高血糖性の昏睡(糖尿病ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症候群、乳酸アシドーシス)
  • 重症の肝機能障害、腎機能障害の合併
  • 重症感染症、外傷、中等度以上の外科手術(全身麻酔施行例)
  • 糖尿病合併妊婦
  • 静脈栄養時の血糖コントロール
②相対的適応
  • インスリン非依存状態でも著明な高血糖
    (例えば空腹時血糖値250mg/dl以上、随時血糖値350mg/dl以上)を認める場合
  • 経口薬療法のみでは良好な血糖コントロールが得られない場合
  • 痩せ型で栄養状態が低下している場合
  • ステロイド治療時に高血糖を認める場合
  • 糖毒性を積極的に解除する場合

※インスリン製剤の種類

糖尿病関連ページ

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME