メニュー

腹痛

腹痛とは?

腹痛とは、腹部領域に起こる疼痛全般のことを総称した呼び方です。
古来より、腹部にまつわることわざは多く、
「腹を立てる」・・・怒る
「腹に決める」・・・決心する
「腹に落ちる」・・・納得する
「腹を探る」・・・相手の手の内を伺う
「背に腹は代えられぬ」・・・大切なものを守るためになりふりかまわない(背中を守るためにお腹を犠牲には出来ない)
といったように、身体の中心部・根幹として認識をされてきた部位です。そのため、ここに疼痛がおきると苦痛が強く、また重要な臓器も多く収納されているスペースの為、その原因疾患も多岐にわたります。
 緊急性の高い疾患も含まれているため、その緊急性や、診断の正確性が重要になってきます。緊急性の判断においては、炎症反応検査やCT検査が最も有効です。
この項目では、主に内臓疾患の中でも消化器疾患に絞って、腹痛の原因について解説します。

腹痛の原因

下記に成人の腹痛の代表的な原因疾患を臓器系統別に挙げます。

  • 消化管系・・・胃・十二指腸潰瘍/穿孔、癌、アニサキス症、感染性腸炎、鼠経ヘルニア、便秘、腸閉塞・S状結腸軸捻転、大腸憩室炎、急性虫垂炎、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患
  • 肝胆膵・・・肝膿瘍、胆石発作・急性胆嚢炎、総胆管結石・急性胆管炎、急性膵炎、膵癌
  • 婦人科系・・・卵巣軸捻転、月経困難症、子宮内膜症、子宮外妊娠
  • 血管系・・・急性大動脈解離、上腸間膜動脈閉塞症/解離症
  • 泌尿器系・・・尿閉、尿路結石症、腎梗塞
  • その他・・・外傷、脾梗塞、帯状疱疹の前駆症状、糖尿病性ケトアシドーシス

腹痛の種類

消化管系の腹部領域では主に、胃、小腸、大腸、肛門が臓器として該当します。
その中でも、一般的には、上部消化管(食道、胃、十二指腸)の疾患による腹痛を胃痛といい、下部消化管(小腸・大腸)による腹痛を腹痛といいます。

胃痛について

腹痛をともなう疾患の種類

下部消化管(小腸・大腸)に目を移しますと、多くの病気が挙げられます。

腸閉塞

まず有名なものは腸閉塞です。腸閉塞は、癌や過去の腹部開腹手術による癒着、腹腔内で腸がはさみこまれてしまうものなどがあります。通常は強い腹痛、嘔吐症状で発症し、排便から遠ざかるという特徴があります。腸閉塞自体の診断はCTで行うことはできますが、その中に一部絞扼性イレウスという、腸へ栄養を送っている血管が圧迫されて腸へ血が行き届かない(壊死)してしまうという緊急性の高い病態が含まれており、診断には造影CTが有用と言われています。絞扼性イレウスの診断となった場合には即手術が望ましく、放っておくと壊死した腸から細菌が身体に侵入し敗血症を起こして致死的となります。絞扼性イレウス以外の腸閉塞では腸管の減圧を目標として、鼻からの減圧チューブ(胃を先端にする胃管、小腸まですすめるイレウス管)を挿入して経過を見ることが一般的ですが、それでも改善が無ければ手術を行うことがあります。

特殊病態としてはS状結腸軸捻転という腸閉塞で、元々曲がりくねっているS状結腸が、ご高齢や基礎疾患、長年の便秘などにより、より緩んでしまって根元からねじれる(キャンディーの包み紙のように)ことにより、通過障害をきたして腸閉塞になるという者です。この場合には緊急で大腸内視鏡を挿入し、レントゲンで腸の走行を確認しながら整復術(捩れた腸をまっすぐな形態に戻す)を必要としますが、腸についているクセが強いと整復が困難なこともあります。整復が成功しない場合、軸捻転を繰り返す場合には手術療法が必要となります。

鼠経ヘルニア

鼠経ヘルニアは、主に腹腔内に存在する腸管が、腹壁の弱いところまたは欠損部の部位で外側に脱出する状態のことで、いわゆる脱腸と呼ばれている疾患です。どの部位にヘルニア(脱出)が起きるかで、外鼠経ヘルニア、内鼠経ヘルニア、大腿ヘルニア、と分けられますが、総称して「鼠経ヘルニア」と呼ばれます。若い方では生まれつき脱出する部位(ヘルニア嚢)が存在することにより発症することが多く、高齢の方では腹壁が加齢性に脆弱化することにより脱出を呈して発症することが多いです。体勢によって一時的に脱出しては戻る方、常に脱出している状態となる方、様々な方がいますが、原則は手術療法を行っていただく疾患となります。万が一脱出する部位が狭くそこで腸管が圧迫されてしまう(陥頓)と、血流がなくなり壊死(絞扼)となってしまうことがあり、この場合には緊急手術が必要となります。

腸の炎症

腸に「炎症」が起きるのも腹痛の原因となります。
有名なものは急性虫垂炎(世の中的には「盲腸」と呼ばれますが、厳密には盲腸は別の腸の部位の名前です)で、小児~若年成人で比較的多い疾患です。右の下腹部に存在する虫垂に炎症が起こり、右下腹部痛をきたします。CTで診断を行いますが、当初は胃腸炎症状(下痢とみぞおちの痛み)のこともあったりするので、発症当初気付きにくいこともあります。抗生剤の治療(いわゆる散らす)や手術が必要になります。

大腸憩室炎も比較的頻度の高い疾患です。
大腸「憩室」とは、大腸の壁が、加齢性変化や食生活の欧米化に伴って脆くなり、ポケットのように凹みを作った空間のことです。これ自体は病気ではありませんが、このポケットの空間は粘膜が脆弱であるため出血や細菌感染をおこしやすく、ここに炎症がおきたものを大腸憩室炎と呼びます。香辛料やアルコールなどの刺激物によって発症することが多く、腹痛や発熱症状を呈することが多いです。軽症例では自宅で食事を柔らかめ・少な目で食べていただいて軽快することもありますが、中等症以上では発熱や腹痛が強く入院として一定期間の絶食や点滴を要することがあります。重症例では腸に穴が開いたり(穿孔)、膿ができる(膿瘍形成)などして手術が必要になることもあります。憩室自体は年齢とともに増えていくもので、なくすことはできないため、増えにくいよう日常的な脂質の量にきをつけていただいたり、発症の引き金になるような暴飲暴食、香辛料、アルコール摂取などを控えていただいたりします。

その他にも、あらゆる疾患の症状の一つとして腹痛があげられます。

腹痛をともなう他臓器疾患

腹痛の検査

  • 採血
  • 腹部CT
  • 腹部エコー
  • 内視鏡検査
  • 便培養検査
  • 尿検査

まとめ

腹痛の原因になる疾患について、消化器系の疾患を中心に解説しました。腹痛の原因疾患は多岐にわたり、その原因を探るのには、「どこが」「どのような時に」「どんな頻度で」痛いのか、また過去にはどんな病歴があったのか、食事内容や排便など、付随する情報の聴取が診断のきっかけにはとても重要になります。症状の経過を一緒に整理して、正確な診断と迅速な治療開始を心がけていきましょう。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME